※参考:The TOWS Matrix-A Tool for Situational Analysis
前回の記事では、現状分析のためのSWOT分析について解説しました。
⇒理想的な保育士獲得戦略のための【SWOT分析】
これで、現在のあなたの組織に関する「強み」・「弱み」・「機会」・「脅威」が、格段に明確化されたことを実感していると思います。
次にあなたがやるべきことは、現在の状況に最適な戦略を構築し、実行することです。
そのために必要となるツールが、今回解説する「TORS Matrix」です。
今回の記事を十分理解することにより、あなたの組織が抱えている様々な問題について、根本的な解決方法や戦略を構築するための、大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。
なぜ「TORS Matrix」が必要なの?
私達の世界は、常に変化し続けています。
私たちは、毎日同じような生活をして、同じような景色を見て、同じような仕事をこなしているように感じています。
しかし、それでも私達が生きているこの世界は、常に変化し続けているのです。
この常に変化し続ける環境に適応できないものは、例外なく淘汰されていることは、過去の膨大な歴史がこれを証明しています。
したがって、私達が、そして私達の組織が生き残るためには、この変化し続ける環境に対応し、自らも変化し続ける必要があります。
これは、企業や地方自治体が採用する方針や戦略についても、全く同じことです。
周辺の環境変化に応じて、自らの戦略や行動を変化させなければいけないのです。
そのような現在の状況変化に対応し、様々な戦略を構築・選択するためのツールが「TORS Matrix」です。
したがって、「TORS Matrix」を利用する場合は、その前提として、その組織が達成するべき目標設定と、「SWOT分析」等による現状分析を完了しておく必要があります。
「TORS Matrix」とは?
「TORS Matrix」は、Heinz Weihrichサンフランシスコ大学教授の「The TOWS Matrix-A Tool for Situational Analysis」という論文で発表された、状況を分析するためのツールです。
ただし、ただ状況を分析するだけではなく、SWOT分析から得られた4要素を組み合わせ、それぞれの状況に応じた各戦略を導き出す有効なツールとして活用します。
冒頭の図表で示されているように、それぞれの状況に応じて、以下の戦略を導き出します。
1.SO戦略(Maxi-Maxi Strategy)
「Strengths:強み」を最大限に利用して、「Oppotunities:機会」を最大化する戦略。または、「Oppotunities:機会」を最大限に利用して、「Strengths:強み」を最大化する戦略。
論文ではメルセデス・ベンツの事例を取り上げている。
・Strengths:強み
自社の技術ノウハウ
高級感
・Oppotunities:機会
海外で豊かな国民が増加している
2.ST戦略(Maxi-Mini Strategy)
「Strengths:強み」を最大限に利用して、「Threats:脅威」を最小化する戦略。
論文では、GMとRalph Nader氏の争いを、ST戦略の失敗事例・教訓として取り上げている。
・Strengths:強み
影響力のある巨大企業
・Threats:脅威
自社製品の欠陥を指摘される
3.WO戦略(Mini-Maxi Strategy)
「Weekness:弱み」を最小化して、「Oppotunities:機会」を最大限利用する戦略。
論文では自動車部品会社の事例を取り上げ、解決策として他社との技術提携などを挙げている。
・Weakness:弱み
自社にマイクロプロセッサ技術が無い
・Oppotunities:機会
エンジンの電子機器に対する需要拡大
4.WT戦略(Mini-Mini Strategy)
「Weakness:弱み」と「Threats:脅威」を最小化する戦略。
論文では、生き残るために戦うか、企業清算・部門売却や合併などの選択肢を挙げている。
具体的な戦略構築と選択。
それでは、「TORS Matrix」を用いた具体的な戦略構築方法等について、想定事例等を通じて解説していきます。
1.SO戦略(Maxi-Maxi Strategy)
SO戦略は、「強み」と「機会」を最大化する戦略です。
◯事例A
首都圏の自治体
・Strengths:強み
地方に比べて予算が多い。
・Opportunities:機会
都市整備により住民や就職希望者増加。
・戦略A
大量の保育士を確保する。
潤沢な補助制度を策定。
保育士資格保有者以外にも、広告等を通じて就職を促す。
2.ST戦略(Maxi-Mini Strategy)
ST戦略は、「強み」を最大限に活かして「脅威」を最小化する戦略です。
◯事例B
首都圏の自治体
・Strengths:強み
地方に比べて予算が多い。
・Threats:脅威
近隣の自治体が、Uターン政策などを実施。
当該自治体管内で勤務している保育士が対象となっている。
・戦略B
現在勤務中の保育士を囲い込む必要がある。
潤沢な予算を用いる。
勤続年数等に応じた奨励金制度等を策定する。
3.WO戦略(Mini-Maxi Strategy)
SO戦略は、「弱み」を最小化し「機会」を最大化する戦略です。
◯事例C
人口減少中の地方自治体
・Weakness:弱み
予算が少ない
・Opportunities:機会
良好な自然環境や住環境等が報道される。
全国の注目を集めている。
・戦略C
観光担当部署等と連携する。
空き家情報等とともに、保育士募集報等を宣伝する。
4.WT戦略(Mini-Mini Strategy)
WT戦略は、「弱み」と「脅威」を最小化する戦略です。
◯事例D
人口減少中の地方自治体
・Weakness:弱み
予算が少ない
・Threats:脅威
都市部の自治体が、保育士への補助制度を拡充。
当該自治体の予算規模では、実行不可能。
・戦略D
近隣自治体と合併する。
より多くの予算を、より効率的に運用して対応する。
保育関連事業を完全に民間企業などにアウトソースする。
他の「強み」を強化することにフォーカスする。
5.戦略の選択
このように「TORS Matrix」を活用することによって、現在の外部・内部環境の変化に応じて、様々な戦略を構築していくことができます。
例えば、SWOT分析で「強み」が10項目、「脅威」が5項目リストアップされた場合は、「10項目×5項目=50種類」の状況に応じた戦略を検討する必要があるということです。
ちなみに、現在実行中の戦略について、その有効性等を確認するために、相互作用行列により簡便的に判断する方法もあります。
ただし、この簡便的な判断方法だけに執着し、現状維持の理由付けツールとして利用することだけは、絶対に避けなければいけません。
※参考:The TOWS Matrix-A Tool for Situational Analysis
特に、現在のような変化が激しい時代においては、定期的に「SWOT分析」や「TORS Matrix」等を実施し、その都度、目標の達成状況を確認したうえで、それぞれの状況に最適な戦略を選択していくことが、とても重要になってくるからです。
そして、どの戦略を選択するのか、あるいは、単一の戦略ではなく複数の戦略を選択するのか。
最終的な決断は、事業全体の目標を把握している決裁権限者が下すことになります。
そして、最後に、その戦略を実行する際の「危機管理プラン」を策定します。
特に、「WT戦略」を選択せざるを得ない状況に追い込まれた場合は、損失が拡大する前に損切り、つまり部門廃止や合併などを選択する勇気も必要です。
戦略的計画プロセスを回し続けろ!
いかがでしたでしょうか?
「TORS Matrix」を用いた戦略構築法について、簡単にまとめてみました。
「SWOT分析」や「TORS Matrix」を用いた戦略構築は、単純な1タスクではなく、「継続的な計画プロセス」の一部です。
常に変化し続ける状況を分析し、最適な戦略を構築・選択し続けるという、「継続的な計画プロセス」の一部なのです。
「TORS Matrix」の提唱者であるHeinz Weihrich教授も論文中で指摘しているように、どのような組織であっても、戦略の決定は常に合理的であるべきです。
単純に前例があったから、あるいは前例がなかったから、自らの責任を回避したいからといった、問題解決を目的としない、非合理的な理由で組織の戦略を決定すべきではありません。
これまで解説してきた「STP戦略」や「SWOT分析」や「TORS Matrix」等は、決してあなたの責任逃れを助けるためのツールではありません。
くれぐれも、公僕としての矜持を忘れず、高い倫理観と強い使命感を持って行動し続けてください。
http://hoikusishushoku.gjgd.net/%E4%BF%9D%E8%82%B2%E5%A3%AB%E7%8D%B2%E5%BE%97%E8%AC%9B%E5%BA%A7/tors【TORS Matrix】最適な保育士獲得戦略を導き出せ!
【限定3大特典!】
商品購入・その他サービス等を
ご利用いただいた方のために、
「保育士の転職を、絶対に成功させるための秘訣」
について明らかにした
【限定特典】をご用意しました!