理想的な保育士獲得戦略のための【SWOT分析】

前回の記事では、STP戦略を通じて独自の保育士獲得戦略構築と、具体的な目標（参入市場等）設定の重要性を解説しました。

⇒難しい保育士争奪戦で生き残るための【STP戦略】。

その目標を達成するために、具体的な要因を特定し、最適な戦略を策定・選択するための分析方法の一つが、今回説明するSWOT分析です。

あなたは、今回の記事内容を十分理解することによって、保育士を獲得するための具体的な独自戦略を生み出す、はじめの一歩を踏み出すことができるでしょう。

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SWOT分析が必要となる理由。

前回の記事でも説明したように、現在の保育士不足問題を解決するには、各自治体独自の対策が必要となります。

好き好んで低賃金で、ストレスの多い劣悪な職場環境で働きたい保育士など、基本的に存在しません。

したがって、あなたの（自治体が管轄する）保育施設で働きたいと感じるような、独自のベネフィット（価値・利益）を、対象となる保育士に提供する必要があります。

しかし、具体的にどのようなベネフィット（価値・利益）を、具体的にどのような方法で提供したらいいのか、現時点では詳細に明確化されていません。

つまり、マクロ的な戦略だけでは、現実の目標を達成することは困難であるため、実際に行動可能で現在の状況に適した目標及び戦略を策定・選択する必要があるということです。

そこで必要となるのが、今回説明するSWOT分析です。

目標達成に導くSWOT分析。

SWOT分析は、目標を達成するための分析手法です。

組織で決定した目標が本当に達成可能であるのか判断し、市場の変化に対応した具体的な戦略を構築し続けるには、定期的なSWOT分析は欠かせません。

そのSWOT分析を構成するのが、以下の4つの要素と要因です。

1.SWOT分析の4要素。

1.Strengths
　強み：目標達成に役立つ内的要因。

2.Weakness
　弱み：目標達成を阻害する内的要因。

3.Opportunities
　機会：目標達成に役立つ外的要因。

4.Threats
　脅威：目標達成を阻害する外的要因。

2.内的要因とは？

SWOT分析の「Strengths：強み」と「Weakness：弱み」を構成する内的要因には、様々なものが考えられます。

例えば、担当部署の人材・施設の充実度・予算・補助制度の内容・自然環境・都市整備・娯楽施設・商業施設・交通の利便性・空き家など、各自治体が有する特色がそのまま、SWOT分析の内的要因とすることができます。

ここで注意しなければいけないのは、保育士獲得を目的とする場合、助成金や補助金などの保育関連の補助制度だけが、SWOT分析で用いる内的要因になるわけではないという点です。

以前の記事でも説明したように、モノやサービスの価値には「機能的価値」と「感情的価値」があります。

⇒自治体担当者のための保育士獲得講座【機能的価値と感情的価値】

もしかしたら、あなたの自治体では、予算が限られていて魅力的な補助制度、つまり「機能的価値」を満足させることができないのかもしれません。

たとえそのような厳しい状況であったとしても、実際に勤務する保育士の感情、つまり「感情的価値」を満足させることができる要因があれば、それは立派なSWOT分析の構成要因となりえるということです。

ただし、可能な限り保育士の給与を含めた待遇、つまり「機能的価値」を高める努力を継続しなければ、そもそも激しい保育士獲得市場への参加自体が困難になりますので、その点だけは十分注意してください。

3.外的要因とは？

SWOT分析の「Opportunities：機会」と「Threats：脅威」を構成する外的要因には、経済状況・法令・技術・競合他社・流行や価値感の変化などがあります。

一見すると、保育士獲得に関連しそうにない要因であっても、活用の仕方によっては絶好の機会を獲得することができます。

例えば、ICT関連の画期的な技術革新があった場合、保育行政には全く関係ないように感じるかもしれませんが、事務作業の効率化などに絶大な効果を発揮する可能性があります。

どのような業界・職種であっても、新しい技術を導入することによって、これまで常識と考えられてきた慣習や定型業務などを、一気に改善することはできるのです。

したがって、外的要因を設定する場合は、前例や固定概念に縛られず、あらゆる外的環境を考慮すべきです。

SWOT分析の実践方法。

それでは、具体的なSWOT分析の実践方法を解説します。

まずは、SWOT分析に用いる「内的要因」と「外的要因」を、ポストイットなどにできるだけたくさん書き出します。

そして、大きな紙かホワイトボードなどを用意し、冒頭の図表を参考にして、SWOT分析マトリクスを作成していきます。

ホワイトボードを縦横4分割し、左上には「Strengths：強み」、右上には「Weakness：弱み」、左下には「Opportunities：機会」、右下には「Threats：脅威」と記入します。

そして、ポストイットに書きだした要因を、以下の判定基準を参考にして、それぞれ該当する項目に貼り付けていきます。

1.Strengths（強み：目標達成に役立つ内的要因。）

あなたの組織（自治体・施設）が目標を達成するために、具体的に役立つと思われる以下の要因など。

・得意とすること。

・優位性があること。

・独自の資源。

・低コストの資源。

できるだけたくさんの要因を、思いつく限り書き出してください。

そして、その要因を「独自の強み」・「共通の強み」・「隠れた強み」の3つの要因に仕分けします。

他の組織と差別化できるのは「独自の強み」ですから、具体的な戦略を構築する場合は、まずこの「独自の強み」を活かす方法を考えます。

「隠れた強み」は、現時点では明確な「強み」としては認識されていませんが、上手く育てることができれば、新たな「独自の強み」として活用することができますので、十分検討する価値があります。

2.Weakness（弱み：目標達成を阻害する内的要因。）

あなたの組織（自治体・施設）が目標を達成するために、具体的に阻害すると思われる以下の要因など。

・苦手とすること。

・改善すべきこと。

・高コストの資源。

できるだけたくさんの要因を、思いつく限り書き出してください。

そして、その要因を「独自の弱み」・「共通の弱み」・「隠れた弱み」の3つの要因に仕分けします。

組織の弱みを明確化することによって、具体的な改善点を明らかにし、将来の無駄な行動や浪費を防ぐ効果を期待することができます。

3.Opportunities（機会：目標達成に役立つ外的要因。）

目標達成に役立つ外的要因を明確にするには、その外的要因の変化に注目すべきです。

法律改正や技術革新によって、あなたの周辺でも必ず新たな変化が生じますので、その変化をあなたの目標を達成するために、どうにかして活用することができないか考えてみてください。

例えば、法律改正等により保育士資格の規制が緩和された場合、あなたが参入する市場は保育士資格保有者だけではなく、一般の労働者を対象とする労働市場へと拡大する機会を得ることになります。

このような外的要因の変化を上手く活用することができれば、あなたの目標を達成するのに役立つ「Opportunities（機会）」とすることが可能になります。

4.Threats（脅威：目標達成を阻害する外的要因。）

目標達成を阻害する外的要因を明確にする場合も、その外的要因の変化や以下の点に注目すべきです。

・あなた直面している脅威

・競合他社の優位点

・機会損失を誘引する組織内の弱点

Threats（脅威）は、基本的に外的要因のことを指しますが、状況によっては、組織内の要因が原因で絶好の機会を有効活用できない場合も、Threats（脅威）となる可能性があります。

例えば、効率的な予算配分を行うため、あらゆる関係各所からの意見を重視した意思決定という組織の「強み」は、同時に、組織の意思決定が遅すぎるという「弱点」となる場合もあります。

このような場合は、あなたの周辺で絶好の機会が訪れたとしても、同業他社に先を越されてしまい、結果として、その機会を十分活用することができません。

あなたの組織内の「強み」が、最終的に目標達成を阻害する「脅威」となる場合があるので、そのような視点も忘れずに検討すべきだということです。

まずは実践あるのみ！

いかがでしたでしょうか？

激化する保育士獲得競争の中で、あなたの組織が有効な戦略を生み出すために必要となるSWOT分析について、簡単にまとめてみました。

SWOT分析は、あくまでも現在の状況を俯瞰し、目標達成のための戦略を構築・選択するための分析手法の一つにしか過ぎません。

実際の戦略を構築する場合は、今回のSWOT分析に加えて、次回解説予定のTOWSマトリクスなどを活用することになります。

ただし、どのような戦略を構築するにしても、SWOT分析などによる組織内の強みや弱み、外部環境の状況把握などは必ず必要になります。

まずは、いますぐSWOT分析を実行し、組織内の要因分析を行うところから始めてみてください。

必ず、新たな視点に気付くことができるでしょう。

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